上杉鷹山って名君と言われてるけど、確か18歳で殿様になったんよね?今と当時の18歳が違うだろうけど、どうして、若い彼が今でも通用するような民主主義的な考えをもって、かつ実行にも移せたのかが知りたい。誰かに師事してたとか、影響を受けた書物だったりとかあるの?
いい問いやね。
まさに、上杉鷹山(うえすぎようざん)は「江戸時代の経営者」であり、同時に「民本主義(民主主義の原型)を体現した政治家」やった。
しかも、若くしてその思想にたどり着いた背景には、明確な教育と思想的師匠の存在がある。
では、彼がなぜ“18歳の殿様”でありながら、21世紀でも通じる哲学を持ち得たのか、順を追って整理してみよか。
1. 上杉鷹山の出自と「養子教育プログラム」
鷹山(当時:治憲)は、もともと上杉家の血筋ではなく、
高鍋藩(宮崎)の秋月家の次男として生まれた。
つまり、地方の小藩出身の青年が、財政破綻寸前の米沢藩(現在の山形)に婿養子として迎えられた、という構図。
- 米沢藩は借金まみれ、領民は餓死寸前。
- 名門・上杉家の看板だけが残り、藩政は崩壊状態。
- そこに18歳の若者が送り込まれた。
しかし彼には、単なる「若さ」ではなく、すでに優れた教育バックボーンがあった。
2. 師匠:細井平洲(ほそいへいしゅう)との出会い
鷹山の思想を決定づけた人物が、この細井平洲(1728–1801)。
尾張藩(愛知県)の儒学者で、「実践的儒学」を説いた人物や。
- 学問のための学問ではなく、「民を救うための政治」を教えるタイプ。
- 空理空論を嫌い、「為政とは行動である」と叩き込んだ。
- 鷹山は江戸留学中(十代半ば)に平洲に師事し、以後一生の師と仰ぐ。
- 即位後も何度も平洲を米沢に招き、助言を受け続けた。
つまり、18歳の青年君主の背後に、行動する思想家がいたということやね。
3. 鷹山を形づくった思想の根本:実学と「陽明学」
彼の政治思想は、「朱子学(理想)×陽明学(実践)」のハイブリッド。
特に平洲から受け継いだのは、陽明学的な「知行合一」=知識と行動は一体という考え方。
「学問とは、行いを伴ってこそ意味がある」
「民が安らぐことが、政治の唯一の目的である」
これが、のちの「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」の思想につながる。
4. 鷹山の“民主主義的”政治の中身
彼が名君と言われるのは、単に善政を敷いたからではない。
「藩主と民の関係」を、家父長的支配から“共生の契約関係”に変えたからや。
主な改革
- 倹約の徹底(自ら衣食を減らす)
→ 殿様が真っ先に粗衣粗食を実行。民が信じた。 - 産業再建(織物・紙・漆器・養蚕)
→ 雇用を生み、経済循環を回復。 - 農民教育(郷校の設立)
→ 読み書き・算術を普及、「考える農民」を育成。 - 職業倫理の確立(家訓)
→ 政治家・役人にも「民の幸福を基準にせよ」と定める。
つまり、彼の政治は“上から与える”ではなく、“共に考え共に動く”民主的精神が根底にあった。
5. 参考にした書物と思想的背景
鷹山は典型的な儒教官僚ではなく、かなりの読書家・思想家でもあった。
影響源を挙げると以下のとおり。
| 書物・思想 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 『大学』『中庸』『孟子』 | 儒教の基本経典 | 道徳政治の理念を学ぶ |
| 陽明学(王陽明『伝習録』) | 知行合一・内省と実践 | 「行動する哲学」 |
| 細井平洲『教民実録』 | 政治は民を教え導くこと | 実践倫理の手本 |
| 中国古典の実務書 | 田政・租税・農業技術など | 政策に直結する知識 |
| 西洋輸入知識(間接的) | オランダ商館経由の近代技術 | 農具・産業技術の改善に応用 |
※西洋の“民主主義”を直接知っていたわけではないが、人間中心・理性主義的な政治感覚を自力で体得していた点がすごい。
6. 「為せば成る」の真意
彼の有名な言葉「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」は、
ただの根性論ではない。
原文ではこう続く:
為さぬは人の為さぬなりけり。
つまり、
「できないのではなく、やろうとしないだけ。政治も人生も同じ」
という、極めて合理的かつ行動主義的な人生観。
これが民主的精神そのものなんよな。
7. 影響の系譜と現代への接続
- ジョン・F・ケネディも、来日中に「日本の最も尊敬すべき政治家」として鷹山を挙げたという逸話も。
- 現代の「地方創生」や「行政の自立再生」論にも、彼の藩政理念はモデルとして引用されている。
つまり、彼は“江戸時代のローカル・ガバナンス”の先駆者。
「上からではなく、現場から国を変える」という思想は、今でも通用する。
■ まとめ:「知行合一のリーダーシップ」
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 師匠 | 細井平洲(実学派儒者) |
| 思想 | 陽明学・実践倫理・民本主義 |
| 政治 | 倹約・教育・産業再生・共生型ガバナンス |
| 精神 | 知と行を一体化、為せば成る精神 |
| 現代への影響 | 地方自治・倫理行政・リーダー教育の原点 |
参考・参照リンク(江戸時代)
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