なりさん江戸時代の吉原って、性病はあったの?
結論から言うと――
吉原には性病は“確実にあった”。しかも江戸社会全体に広く存在した。
ただし、現代のイメージとはちょっと違って「対処方法」「広がり方」「社会の認識」に江戸ならではの事情があるんや。
ここから“現場の温度”で説明するで。
1. 一番多かったのは梅毒(“瘡毒”)
江戸の資料で最も頻繁に出てくるのは
梅毒=当時の呼び名は「瘡毒(そうどく)」。
症状の記録を見ると
- 皮膚のただれ
- 発疹
- 鼻が崩れる
- 声が枯れる
- 倦怠感
など、まさに梅毒の典型や。
治ればええけど、治療法は不完全やから慢性化することも多い。
江戸後期の吉原の遊女は、3〜4割が梅毒経験者
という推定もある(歴史学の通説ライン)。
2. 淋病(りんびょう)も多かった
「小便が痛い」「黄色い膿が出る」という記録が多く残る。
江戸の男性の日記にも、
- 「ゆゆしき小便痛」
- 「快楽の貸しありて、苦患の返しあり」
みたいな“それっぽい表現”が山ほど出てくる。
つまり 吉原に限らず江戸社会全体で蔓延してた。
3. じゃあ吉原は地獄やった? → 実は違う
吉原は「性病が特に多かった」のではなく、
“記録が多く残ったから目立つ” という面が強い。
理由は3つ。
1)遊女の健康状態を管理していた
病気がひどい遊女は客に出せないから、
吉原は医者を常駐・契約していた。
その診療記録や、抱える店の帳面が残った。
2)江戸の庶民は医者に行かない
町人の性病は“恥”なので記録がほぼ残らない。
だから相対的に吉原の数字が突出して見える。
3)遊女の人数が多い(ピーク時は3,000人以上)
母数が大きいぶん、感染も多く見える。
4. 江戸時代の治療法は?
治療法で代表的なのが “水銀療法”。
- 水銀入りの軟膏を塗る
- 水銀湯に浸かる
- 水銀を飲まされることもあった
今なら完全アウトやけど、
当時は「梅毒に効く唯一の薬」と信じられてた。
副作用で歯が抜けたり、体調を崩すケースも多かった。
5. 吉原は本当に“不衛生な場所”だったのか?
これは誤解が多い部分。
- 遊女は毎日風呂に入った
- 寝具も頻繁に洗濯されていた
- 部屋や衣装の管理は厳しかった
- 客はまず「会所湯」で体を清めさせられた
吉原は「高級遊郭」やったから、
衛生管理はむしろ当時としてはトップクラス。
性病は“構造的に避けられない職種”やっただけや。
6. どれくらい深刻やった?
結論、仕事を続けられなくなるレベルの遊女も多かった。
- 進行すると外見に影響
- 身体も動かない
- 客に出せなくなる
- → 店に“廃業”扱いにされる
特に梅毒の晩期症状は重かった。
だからこそ、
吉原は医者を雇ったり薬を常備したり、
“経済的理由で”衛生管理が進んでいったんや。
性病は確実にあった。
でも吉原だから特別というより、その職の宿命。
衛生管理はむしろ江戸屈指のレベル。
吉原や江戸の“性病・遊郭”まわりの 隠語(いんご) を、当時の資料や日記に出てくる実際の表現でまとめるで。
歴史の実生活シリーズとして、現場の温度で。
江戸遊里の「性病」関連の隠語一覧
| 隠語 | 意味・現代語訳 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 瘡毒(そうどく) | 梅毒の総称 | 医療文献にも出る公式寄りの言い方 |
| 花柳病 | 性病の美称 | 明治以降にも残る |
| 腐れ(くされ) | 性病、特に重い梅毒 | 汚辱性が高い表現 |
| 腐(くさ) | 同上・梅毒の略称 | 日常会話で使われた |
| かさ(瘡) | 皮膚がただれる症状 | 梅毒初期症状の隠語 |
| 当たる | 性病に感染する | 「当たりを引いた」の感覚 |
| やけど | 性病の感染 | 小言や笑い話の文脈 |
| 金瘡(きんそう) | 性病 | 金銭と結びつける皮肉 |
| 薬喰い | 性病治療で薬代が多くかかる | 経済的ダメージを指す |
| 湯の花 | 性病での発疹や膿 | 湯屋の文脈で使われる |
| 竹の皮 | 性病で皮がむける状態を揶揄 | 結構きつい表現 |
| かくれ~ | 性病持ちの遊女や客 | 名指しせず隠語化 |
| ふぐり病 | 陰嚢が腫れる様子 | 淋病などの合併症 |
行為や遊郭内で使われた隠語
| 隠語 | 意味 |
|---|---|
| ひらく | 客をとる(開業する) |
| くすり(薬) | 性病薬・水銀薬 |
| 是非もなく | 即決で遊ぶ、断らずに入る |
| 身上(しんしょう) | 体の状態=病状 |
| 娼家(しょうか) | 遊郭 |
| 夜鷹(よたか) | 路上の売春婦 。衛生状態悪い象徴 |
| くずれる | 病で廃業 |
日記・文学に出る“それっぽい”表現
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| 「身の内あやしく」 | 体調がおかしい→性病を示す暗号 |
| 「小便あわただしく」 | 淋病の排尿痛 |
| 「快楽の貸しありて、苦患の返しあり」 | 遊びの代償で性病 |
| 「春の雨に濡れて」 | 吉原帰りの男性の日記でよくあるぼやき |
なぜ隠語が多かったのか?
- 性病は 恥・体面の問題
- 遊女の評判は経済そのもの
- 公的には“存在しないこと”にしたかった
だから
医者・遊女・客・店の間で暗号化された言葉が発達した。
吉原は情報産業でもあったから、
現代のSNSみたいに“言い回し文化”が生まれやすかったとも言える。
性病はあった。でも公言できないから、隠語という文化が生まれた。
経済・体面・評判の世界だからこそ、独特の言語体系が育った。

