近江商人の「三方よし」と現代のCSR(企業の社会的責任)

近江商人3方良しと現代のCSR

■ 近江商人の「三方よし」とは

「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三つを同時に満たすという、近江商人の経営哲学です。

単なる利益追求ではなく、取引を通じて社会全体を良くするという倫理観が根底にあります。

  • 売り手よし:商人自身の利益が確保されること
  • 買い手よし:顧客に満足と価値を提供すること
  • 世間よし:地域社会・国家・人々全体にとっても利益になること

この考え方は、当時の移動商人にとって信用が命であった背景から生まれました。

信用を得るためには、一方的に儲けるのではなく、取引相手や地域社会の利益にも貢献する必要があったのです。


■ 現代CSR(Corporate Social Responsibility)

CSRは「企業の社会的責任」を意味し、利益の追求と社会的価値の両立を目指す経営概念です。

環境保護・人権・法令遵守・地域貢献・サプライチェーン管理など、多面的に企業活動の責任を求めます。

国際的には「ISO26000(社会的責任に関する国際規格)」で次の7つの中核課題が定義されています:

  1. 組織統治
  2. 人権
  3. 労働慣行
  4. 環境
  5. 公正な事業慣行
  6. 消費者課題
  7. コミュニティへの参画と発展

■ 比較:三方よし × CSR

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観点近江商人の三方よし現代CSR
基本理念相互利益と信用の重視持続可能性と社会的責任
主体商人(個人・地域共同体)企業(組織・グローバル企業)
対象範囲売り手・買い手・世間(ローカル)ステークホルダー(顧客・社員・投資家・地域・環境など)
時代背景商取引中心の地域社会グローバル資本主義・地球環境問題
手段誠実な商売・信用の蓄積CSRレポート・ESG投資・SDGs活動
目的共存共栄・長期繁栄持続可能な社会の実現(サステナビリティ)

■ 共通点と相違点

共通点

  • 倫理性の重視:利益のために他者を犠牲にしない。
  • 長期的視点:一時の利益よりも、信頼と関係の継続を重んじる。
  • 社会との共生:企業活動を社会の一部として捉える。

相違点

  • 範囲の拡大:三方よしは地域社会中心、CSRは地球規模(環境・人権含む)。
  • 形式化の度合い:三方よしは行動哲学、CSRは国際基準や制度に組み込まれている。
  • 動機の違い:三方よしは内面的倫理(信用維持)から、CSRは外部要請(社会的圧力・市場評価)も強い。

■ 現代への応用

現代CSRが形式化・制度化される一方で、形骸化のリスクも指摘されています。

そこで再評価されているのが、「三方よし」の実践的・心的倫理です。

たとえば、

  • サステナビリティ経営=「世間よし」
  • 顧客体験重視=「買い手よし」
  • 社員幸福度向上=「売り手よし」
    として再構築すれば、CSRがより「血の通った経営哲学」として機能します。

参考・参照リンク(江戸時代)

※本カテゴリの記事は上記の史料・展示情報を参考に再構成しています。


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