江戸時代、地方から江戸に出てきた人が土産に浮世絵や本を買って帰る――
これ、よく時代劇でも見る光景ですよね。
でも、ふと疑問が湧きます。
なりさん紙だよね? 移動中に雨降ったら、グシャグシャにならなかったの?
江戸から大坂まで徒歩で十数日。
途中、必ず雨に降られます。
傘もない時代、どうやって紙製品を持ち帰ったのか。
実は、ちゃんと対策がありました。
1. 店が「防水梱包」してくれた
まず大前提として、
江戸の土産物屋は、遠方に持ち帰ることを想定して売っていた。
浮世絵や本を買うと、店側が以下の梱包をしてくれました。
- 油紙(あぶらがみ) で包む
- 竹皮や経木(きょうぎ) で挟んで形を保護
- さらに 風呂敷 で二重に包む
油紙というのは、和紙に荏胡麻油や桐油を塗り込んだ防水加工紙。
今でいうビニール袋のような役割です。
水を弾き、破れにくく、しかも通気性があるので蒸れない。
繰り返し使える優れものでした。
2. 風呂敷は「可変式リュック」だった
現代では「物を包む布」というイメージの風呂敷ですが、
江戸時代は 運搬システム そのものでした。
- 防水性のある木綿や麻製
- 結び方で形状を自在に変える
- 背負う、肩にかける、手に持つ――すべてに対応
つまり、風呂敷は単なる包装材ではなく、
形を変えられるバッグ だったんです。
雨が降れば、風呂敷の上からさらに蓑(みの)をかぶる。
これで二重三重の防水対策になりました。
3. 和紙自体が「水に強かった」
それでも事故は起こります。
川を渡るときに転んだ。
突然の豪雨に見舞われた。
そんなときでも、実は 和紙は意外と水に強い んです。
理由は以下の通り。
- 和紙は繊維が長く、現代の洋紙より丈夫
- 墨は油性成分を含み、にじみにくい
- 浮世絵の顔料も、定着性が高い
完全に水没すればアウトですが、
多少濡れた程度なら、乾かせばほぼ元通り。
江戸時代の紙製品は、
「多少のダメージは想定内」で作られていたんですね。
4. なぜこの仕組みが必要だったのか
現代なら「宅配便で送ればいい」で終わる話ですが、
江戸時代には宅配便がありません。
だから、
商品そのものが「旅に耐える設計」になっていた わけです。
この仕組みがあったからこそ、
浮世絵や本が地方に流通し、江戸の文化が全国に広がりました。
役者絵が地方で人気になり、
江戸の小説が上方で読まれるようになったのも、
雨に濡れても大丈夫な流通システム があったからです。
まとめ
江戸土産の浮世絵や本は、こうして守られた:
- 店が油紙・竹皮・風呂敷で防水梱包
- 風呂敷+蓑で二重防御
- 和紙自体が耐水性を持っていた
地味な技術ですが、
これがなければ「江戸文化の地方伝播」は成立しなかったでしょう。
文化は、思想だけでは広がらない。
運ぶ技術があって、初めて広がる ――
江戸の人たちは、それをちゃんと理解していたんですね。

